雨に似ている  (改訂版)

詩月の指が痺れたように、微かに震え出す。
詩月の胸は、鼓動が速くなり、息苦しさも感じ始める。


「周桜? 演奏に聴き惚れているのはいいけれど、彼女が困ってるみたいだ」

貢が詩月の腕をつつく。

詩月は注文を取りに来たウェイトレスが呼んでいることにさえ、気づいていなかった。


「あっ……と、紅茶を」

顔を上げ、ばつが悪そうにこたえる。


「とっても素敵な演奏ですものね」

ウェイトレスがピアノを振り返り、微笑む。


「でも確か……この曲。先日、途中で不協和音が鳴って中断された曲? 何だか違う曲を聴いてるみたいだけど……」


――素人の耳にも明らかに違いが判るほど、違っているのか?

詩月は小さく溜め息をつき、「そんなに違って聴こえますか?」と訊ねる。


「先日の演奏は……『哀しいほど優しい雨音』でしたよね。何より、周桜宗月の演奏に似ていて素敵だったのに」