雨に似ている  (改訂版)

「そう……ですか」


「まあ、あの状況で何処も悪くないとは思えなかったけれど、理久から聞いて正直、俺も驚いたよ」


「……あの、緒方も知ったんですか?」

詩月は不安げに訊ねる。


「いや、郁には話してないっていうか、話さない方が良さそうだと思った」

詩月は首を傾げる。


「お前が倒れた日、郁はひどく落ち込んでたからね。西ノ宮教授のレッスンは確かに厳しいので評判だけど、倒れるまでハードではないからな」

貢は珈琲を1口啜る。


「あそこまで怒鳴られれば気分的にも、かなり滅入るだろうし、メンタル面が弱いのかとも思ったんだ。パニック症候群とか、過呼吸とかね」

詩月は次に何を言うのか、気が気ではない様子で貢を見つめる。


「お前に度々コンクール出場や留学を勧めてる楢岡教授。悉く渋られるって、ぼやいてる。体調が理由なんだろう? 見たところスタミナもないみたいだし」