雨に似ている  (改訂版)

「いえ……」

詩月は短くこたえ、空いている席を探す。

雨のせいもあるのか、店内はいつもの1.5割増。

レジに近い側の窓際の席には、既に先客が座っている。


「周桜!」

詩月が奥の席を探し、先へ進もうとしている所に名を呼ぶ声。

更に、声の主は袖口を強く引っ張る。


「相席で良ければ」

席を1つ奥に移る。


「あ……安坂さん」

向かい側の席にはまだ、口をつけていない珈琲が置かれたままになっている。


「せっかちだろう。郁だよ。珈琲を注文して、ピアノへ直行さ」

貢が口角をあげ、ピアノの方を見ながら言う。


詩月は「……遠慮なく」会釈し、貢の隣の席に座る。

「体はいいのか?」

貢は穏やかに訊ねる。


「ええ、まあ」

曖昧にこたえる詩月。


「あの後、気になって悪いと思ったんだが、理久から事情を聞いた」