雨に似ている  (改訂版)

「彼、大丈夫だったの? 1人にして」

郁子は貢が、正門まで来るのを待って訊ねる。


「ああ、迎えがくると言ってた」


「そう……何だか色々あって、頭の中がごちゃごちゃしてる」


「そうだな。けど……1番驚いたのは、あの演奏だな」


「……すごいファザコン」

郁子は不機嫌そうに言う。

「ん……あれは単なるファザコンで片付くレベルとは思えないな」


「どういう意味?」


「父親に酷似した演奏、ヤバいよな。演奏家生命に関わる問題だな」


郁子は首を傾げる。


「彼も言ってただろう? 『周桜宗月は2人いらない』と」


「あ……」


「コンクールに出場しなかったのも、おそらくそれが理由なのでは」


「そんな大層なこと? 彼が被害妄想なだけじゃないの?」


「あいつが抱えてるものは、そんな簡単なものではないな」