雨に似ている  (改訂版)

詩月は涙を溜めた郁子を見上げ、冷静に呟く。


転校初日。
学生たちの質問攻めの内、ただ1つ「趣味は読書だ」とこたえた詩月。

郁子は万葉集について熱く語っていた詩月を思い出す。

正直、郁子には無常感だとか、生命感だとか、さっぱり意味がわからなかった。

郁子は涙の伝った頬を拭い、詩月を見下ろす。


「どうかしてるわ。本気で心配したのに」


貢は「何なんだ、こいつ」と思いながら、ただ詩月の背を擦る。

ただ、どんなに苛立っても、目の前で辛そうにしている詩月を放ってはおけないと思った。

貢は詩月の呼吸が落ち着くまで、詩月の背を擦り続けた。


「大丈夫か、1人で帰れるか」とまで訊ねた。


詩月は穏やかに礼を述べ「母が……」とこたえた。


貢は詩月と別れ、スマホを操り、詩月が呟いた「鯨魚取り」の歌を検索してみる。