雨に似ている  (改訂版)

郁子の腕を掴んだ詩月の手から力が抜け、体がぐらつく。

貢は詩月の体を抱き止め。静かに床の上に座らせ、胸に手を当てうずくまる詩月から、制服のタイを素早く外す。

さらにカッターシャツのボタンを開け、スラックスのベルトを緩める。


苦しげに喘ぐような息遣いをする詩月の背をさすりながら、幾度も顔を覗きこむ。

郁子は詩月から目を外せずに、茫然と立ち尽くしている。

――あのコンクールの周桜くんの「雨だれ」は、私の憧れだったのに。
あんなに凄いショパンは聴いたことがなかったのに……。

郁子は2年前のコンクールで、詩月の弾いた「雨だれ」を思い浮かべながら、目の前の詩月を見つめる。


――ずっと、周桜くんがコンクールに出場するのを心待ちにしていたのに


郁子は目の前の詩月から、コンクールで弾いている姿が想像できない。