雨に似ている  (改訂版)

父親とはいえ比較されるのは、堪らないだろうと貢も郁子も思う。


「なのに……別れ際、奴は僕に笑顔でこう言った」

詩月は俯き、長い溜め息を漏らす。

「『私は、周桜宗月とは同期だった。大学に入学以来、卒業するまで彼には1度も実技で敵わなかった。
そればかりかコンクールでも、彼には1度も勝てなかった。負け続けた相手だから言うのではないが、彼は素晴らしいピアニストだ。君には、他の学生より厳しく辛く指導したと思う。
でもそれは、見込みがないからそうしたのではなかった。君の演奏を下手だと思ったことは1度もない」

淡々と話す詩月の声が震える。
ギュッと握りしめた手に、力がこもる。



「私は、君が周桜宗月の息子であるないに関わらず、君なら彼を越えるピアニストになれると思った。今でもそう思っている』と」

自嘲気味に「バカみたいだろ」と笑う。