雨に似ている  (改訂版)

「……わかっただろう、演奏放棄の理由……」

抑揚のない憔悴したような声。


「周桜くん!?」

転校してきて以来、郁子は詩月のこれほど険しい表情を見たことがない。

郁子は、いつも我関せずを決め込んだような冷めた表情で、淡々としている詩月の姿しか知らない。

郁子は疲れきり、沈んだような詩月の表情に驚く。


――あれだけ演奏を否定されれば、いくら普段は冷静でも落ち込むだろう

郁子は思う。

戸惑う貢と郁子を見据えて、詩月は更に続けた。


「ついでに……前の学校を退学した理由を教えようか」


まるで、2人を挑発するかのように。


「退学した!? あの噂、本当だったのか?」

貢が問い返し不思議そうに、彼の顔を見つめる。


「ピアノ科の主任教師が最悪だった。彼は最初のレッスンから、ショパンの曲を指定してきた」

貢も郁子も首を傾げる。