雨に似ている  (改訂版)

詩月は更に優しく暖かく甘く穏やかに、雨音を奏で続ける。


静かに降り注ぐ柔らかな雨音を響かせ続ける。


「おい……マジか!? あいつ、正気か」

理久がひと際、大きな声を出す。

貢は思わず理久を振り返り、不思議そうに見つめた。

刹那――耳を劈く轟音の不協和音が鳴り響いた。

指を鍵盤に激しく叩きつけたような音に、店内から悲鳴も上がった。

これから優しい雨音が、暗く重く闇に覆われたような音に一変し、曲調が変わる――その寸前。


激しく窓を打ち吹きつける雨音を詩月が、どう表現するのか?

演奏する詩月自身ののテンションも、店内に居合わせた聴き手の期待も、高まろうとしていた……。

矢先の不協和音だった。


「貢! 詩月を家まで送ってく……悪い、会計頼む」


急いで叫んだ理久に、貢が鞄を投げる。