雨に似ている  (改訂版)

「ありがとう」

不安を断ち切るように囁く。

「緒方……コンクールに挑戦してみようと思う」

詩月が明るい声で言う。

喜びと感謝そして祈りをこめるように。

ーー貴方の意志が希望を生み出す

詩月は郁子の言葉を思い浮かべる。

ーー何もかもどうでもいいと思い、ピアノを諦めようとした。1番辛く苦しい時かけられた緒方の言葉に支えられた。ピアノを諦めなくて良かった

詩月はピアノを弾ける喜びと、生きる勇気を与えてくれた言葉を胸に刻み、心の中で何度も呪文のように唱えながら、決意を込める。

「緒方……。2年前のコンクールで君の演奏を聴いた時、コンクールにはもう出場したくないと思った。……ずっと君の弾いた『雨だれ』が忘れられなかった。君には負けたくないと、ずっと思ってピアノを弾いてきたような気がする」

「周桜くん!?」