雨に似ている  (改訂版)

気を抜けない、耳を放せない。


――凄い

何処からともなく、溜め息がもれる。


貢は詩月の清心な演奏に感極まり、胸が高鳴っていくのを感じた。


1音1音、雨の雫の1粒1粒を掬い上げるように繊細な音色、音が溢れる。

どこをとっても、取りこぼしのない完璧な「雨だれ」だ。

彼の表情から、めいっぱい感情を入れて弾いているのがわかる。

それでいて尚、感情に流されることなく、美しく艶やかで演奏が乱れない。

詩月の演奏に、胸が痛いほど熱く切なくなっていく。

だが、貢と郁子は顔を見合わせ、首を傾げた。


「貢、2年前の『雨だれ』と何だか演奏が違うわ。彼、弾き方を……変えたのかしら」


「そうだな。何かが……違う。2年前とは別人の音、別人の演奏のような……」

彼らと相席している理久の顔も、違和感に歪んでいる。