雨に似ている  (改訂版)

その彼「周桜詩月」が奏でる演奏に店内がざわめく。

詩月がピアノに指を構えると、店内の空気が瞬時に緊張し静寂した。

貢も郁子も2年間もの沈黙を破り、詩月がいったいどれほどの演奏をするのか?

興味津々、詩月の演奏に期待をこめて、演奏に集中する。

詩月の指が鍵盤に触れた瞬間、郁子の表情が変わる。

静かに、穏やかに曲が始まる。


甘く切なく囁く音、
優しく降り注ぐ雨音。

窓を撫でるように滑りながら清々と、そぼ降る雨の微かな気配さえも、一音一音丁寧に、繊細に美しく奏でる。

正確なピッチを刻むピアノの音色、計算しつくされた繊細で清心な調べ、どこまでも優しく澄んだ音色だ。

詩月は真剣かつ懸命に、慎重に、曲を奏でているように見える。

雨は、これほどまでに優しく降るのかと疑うほど、温かい彼のピアノの音色に学生たちは聞き入る。