雨に似ている  (改訂版)

翌日。

詩月は郁子と貢に声をかけライブ当日、演奏する楽器で音合わせをするため下村楽器店を訪ねた。

当日にピアノのを弾く郁子は、かなり緊張した様子で指慣らしをした後、あまり難しい曲でなく誰でも知っている曲がいいと思うと、往年の英国グループの名曲「Beatlesの『Let It Be』」を弾き始めた。


「周桜くん、貢、適当に合わせてくれない?」

郁子の申し出に詩月も貢も楽譜なしの即興で、合奏させられるハメになり、少々面食らいながらも郁子のピアノに合わせ、なんとかヴァイオリンの音を重ねた。

詩月はライブ用に編集してきたという郁子のピアノ演奏を聴き、改めて郁子の実力がどれほどのものかを知らされた。

流石は音楽科ピアノ専攻の首席を維持し続けただけの実力だなと感心したが、初めての音合わせに多少、戸惑っている感がみてとれた。

詩月は貢のヴァイオリンにも驚かされた。

彼には、屋上で「マスネ作曲『タイスの瞑想曲』」を弾いた時に、「ヴァイオリニスト志望でないのが惜しい」と言われたのを思い出したが、貢自身の演奏をまともに聴いたのは初めてだった。