雨に似ている  (改訂版)

「でも、そう簡単には弾けない……」

郁子は心配でならない様子で頼りない声を出す。


「今回のライブは、理久が周桜に『息抜き』をさせるために持ちかけたんだ。周桜が、毎日遅くまでピアノを弾いてるんで理久も心配なんだろう」

「貢……彼、体は大丈夫なのかしら?」

「さあな、詳しいことを俺も聞いていない。夏休みには検査も兼ねて入院したようだが」

郁子の表情が曇る。


「ねえ貢、……親子で演奏が似ているって、すごく大変なことなのよね。なのに……」

貢は屋上での1幕を思い出し、あれほど威勢良く彼を叱咤激励しながら? 可愛しく後悔をしているのかと思う。


「郁、周桜はわかってると思うよ。君の言いたいことも、自分がどうすべきかも。ちゃんとわかっているから、諦めずに懸命に挑んでいるんだ」

郁子の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。