*** 「…今は、離れんな………っ」 なんとか間に合って彼女は今、オレの腕の中。 本人もよほどのことだったみたいで、ピクリともしない。 ………あの車、信号無視か。 とりあえず、周りを安全かどうか確認する。 なんだかこの手を離すのが怖いと思ってしまうのは、さっきの光景を見たからなのか。 「…………ふぅ、行くよ」 今度は彼女の手を引いて歩道へと向かう。 人気の少なかった所為で、きっと大事にもならないだろう。