side希尋




どうして、思いは上手く伝わらないんだろう____
















倒れた礼央を、ベットにそっと寝かせる。

額に張り付いた前髪を、パラパラと払ってやると、俺ベットに腰掛けた。

暫く礼央の寝顔を見つめていると、扉が開いた。

ひょこっと顔を出したのは、麻央だ。

「先輩の様子、どう?」

「寝てる。疲労だってさ」

「そっかー。大事なくて良かったね」

いつもの様に、ふにゃりと笑みを浮かべる麻央。

でも、普段よりその笑みは違う気がして。

「麻央。どうかした?」

「………ねぇ、今度は守れるかな?」

「麻央……」

「あの子みたいに、ならないかな」

目を細めて、泣き笑いにも似た表情を浮かべて、麻央は礼央を見つめる。

「先輩が倒れた時、あの子と重なって………。……どうしようかと思った」

麻央は手を伸ばす。

礼央にあと僅かで触れるというところで、手を引っ込めた。

「………なぁんてね」

先程までの、泣き笑いは影も無く、いつも通りのへにゃりとした笑みが浮かぶ。

俺は、べしっとその頭を叩いた。

「痛い!何すんの、希尋」

「別に」






_____誰にだって、言葉に出来ない想いはある。

でも、言葉にしなければ伝わらない。

それが、どうしようもなく、苦しいんだ。






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