じわりと視界が滲む。


瞬きをすれば、溢れそうなそれを、必死で押し留める。

彼らの前では、泣きたくなかった。

意地でも、何が何でも。




「お前………」

蓮が私の顔を見て、眉根に皺を寄せて言う。


「何でもない!」

それを遮るように、私は声を荒げた。

沙由里ちゃんが、ビクっと肩を震わす。



…………もう、ここからいなくなりたかった。

今すぐここから、逃げ出したかった。




でも、足が根が生えたように動かない。

足は、小さく震えていて。



__________私だって、怖かったんだ。




暴走族の、幹部の彼らに対して。

私は、ちょっと喧嘩の出来る、ただの女子高生。

虚勢を張って、怖くないフリをするくらいで。

精一杯なんだ。


「礼央……お前は」

蓮が何かを言いかけたときだった。

「蓮っ………」

ぎゅっと沙由里ちゃんが蓮に抱きつく。

「もう、いいよ!れ、礼央だって、前は仲間だったんだよ!?」

震えながら、私を庇う。

ううん。

庇う、フリをする。

だって、そうすれば。

「……もう、仲間じゃねぇよ」

「そうだよ!沙由里ちゃん、そんな奴なんか庇わなくていいんだよ!」

「裏切り者は、仲間にいりませんから」

皆んながこういうことくらい、分かってるじゃない?

そうやって、私を傷つけようとしてることくらい、分かってる。

そして、私が傷つくことも。