ああ、油断していたな、と。


今更後悔しても遅いんだけど。





「………礼央が……私っ……」

床に座り込んで泣く沙由里ちゃんと。

「……礼央……てめぇ……!」

私を睨む蘭華の彼ら。

思わず、冷たい目で見ちゃったんだけど。





何で、こうなったんだっけ?

私は、黙って目を閉じた。







確か、今日は珍しく呼び出しが一つもなくて。

だから、普段より気を抜いて。

スマホをいじりながら、下駄箱に向かってたんだった。

つい、夢中になって、前からの気配に気付かなくて。

ドンッと衝撃を感じて、アッと思った時には。

クルクルと手から飛んでいくスマホと。

「……いったぁ……」

可愛らしい女の子の声。

あっ、と思った時にはもう遅くて。

尻餅をついた沙由里ちゃんと、周囲の冷たい目が私を襲う。

一拍置いて、沙由里ちゃんが震えて泣き出した。

…………絶対わざとでしょ。

まあ、前を見てなかった私も悪いけど。

普通に歩いていてぶつかっても、あんな衝撃は来ない。

でも、私は普通に歩いてたし。

てか、普通よりも遅かったし。

だとしたら、沙由里ちゃんがわざとぶつかったとしか考えられない。