私は何を信じればいいですか?

希尋が帰ってしまうと、急に部屋が広く感じる。

元々狭くもないし、物も必要最低限しか置いてないから、普段から広くは感じる。

けれど、それとはまた違う。

ポツンとした、一人ぼっちの寂しさ。

「そう言えば、うちに誰か来たの久し振りかも」

そう呟くと、尚更寂しくなってしまった。

「出かけよっかな」

わざと大きく呟く。

大丈夫。

寂しくない、寂しくない。

財布と、大したデータの入ってないスマホ。

それからパーカーを羽織って家を出る。

いつの間にか、陽はかなり傾いていた。

しばらく歩くと繁華街にでる。

私はフードを目深に被った。

陽はもう沈んでしまって、ネオンがキラキラ光っている。

雑然とした騒がしいこの街は、どこか落ち着くので気に入っている。

その中でも特にお気に入りのバー

【Ellmmo(エルモ)】

扉を開けると、重たいベルが、ガランガランと大きく音を立てた。

まだ早い時間帯だからか、客は1人もいない。

と言うか、店員もいない。

まあ、勝手にカウンターに座っちゃうけど。

カウンターの入り口から一番遠い、隅が私の特等席なのだ。

「すみませーん。ただ今準備中っ……て高校生。何してんの」

「でかい声で言わないでくださいよ」

誰かに聞かれて、万が一補導されたらどうすんの。

「だって俺、名前知らねーし」

「私だって、マスターの名前知らないし」