「…………そっか。昨日のあそこは、希尋の家なんだ」

「そ。ちびっ子達は俺の家族」





ただいま、ほんの少しだけ。

希尋のことを聞いています。





希尋は、昨日の行った施設に住んでいるらしい。

幼い頃に預けられたとかで。



「家族かぁ……。あの子達なら、退屈しないね」



繊細な問題だろうから、言葉は慎重に、丁寧に選ぶ。


だって、一度発した言葉は変えられない。

そこで希尋の気を損ねたり、傷つけたらもうおしまい。

ゲームみたいに、やり直しはきかない。

だから、慎重に。

慎重に。




………思ってたより、私は臆病だ。



「退屈どころの騒ぎじゃないけどね。あいつら、丁度遊びたい盛りだし」

「希尋がお兄ちゃんっぽいのも納得」

「そこまで兄っぽくもないと思うけど?」

「面倒見いいじゃん。姉御肌ならぬ兄貴肌?」

「何それ」

「……んー、何だろ?」

自分でも何を言ってるかわからなくなった私は、希尋と顔を見合わせて笑う。

「「ははっ」」

久し振りに出した笑い声は、何だか暗い気分まで吹き飛ばして。

心に涼しい風を送り込んでくるようだった。

「…………やっと笑った」

「え?」

希尋はふわりと笑みを浮かべる。

柔らかい、優しい笑み。

「もっと、笑えば?」



『もっと、笑えばいいのに』



「笑ってる方が、似合うと思うけど?」


『笑ってる礼央の方が可愛いよ』