「へぇー、希尋が一目惚れかぁ」

なんか、想像つかない。

あんなクールな男が、一目惚れだなんて。

「俺が一目惚れしちゃ悪い?」

いきなり背後から現れた希尋。

かなり吃驚したんだけど。

「別に悪くないよ?ただ、希尋はそういう風に見えないから」

「そういう風って?」

……上手く説明できないけど、

「一目惚れって、まず顔で判断してるってことじゃん。内面は二の次。
でも希尋は、外見だけで選ぶような人には思えないってこと」

そう言うと、希尋は肩を竦めた。

「別に俺は、礼央が思ってるほど出来た人間じゃない」


そうやって言う、希尋の横顔は何だか寂しそうで。

「私は希尋のこと、そんなに知らないけど。少なくとも、私が見た希尋はさ。
すごい優しい、良いヤツだよ」

きっと、希尋は私やマコちゃんと同じで。

溜め込んじゃうタイプ。

でも、それじゃ駄目なんだ。

いつか、大きな爆発がくる。

________マコちゃんみたいに。

声をかけてあげる誰かが、必要なんだ。



「……何かさ、そんなこと言われたの初めてだから……何て言ったら良いのか、わかんないけど………」



いつか希尋にも、一緒に気持ちを分かち合える人が、出来るといい。

私にとっての、蘭華みたいなヤツらが。


「、ありがと」

ぱっちりと、希尋と私の目が合う。

私達の間に、何かが繋がったような気がした。

「……ありがとうで、合ってると思うよ」


希尋の気持ちを分かち合えるヤツが、私だったらいいな。

そんな想いを、口に出せるのはまだずっと後の話。

今はまだ、私だけの秘密。