うるさいくらいの大歓声。
シャツが汗で身体にへばり付く。
枯れそうになるほど張り出す声。

あぁ、今にでもぶっ倒れそうになる。

ギターを持つ腕が痛い。
ギターが鉛のように重い。
息が切れそうだ。
熱い。暑い。アツイ。

何度も歌うのをやめてしまいそうになるのを堪え、叫ぶ。

最後の歌を歌い終わり、ギターを下ろし、マイクを持ち直す。

「今日来ていただいたみなさん。本当にありがとうございました!
バンドを結成してから、まさかこんな大舞台で歌えるなんて思ってもみませんでした」

観客からは、いいぞー!とか、こっちこそありがとー!など、いろんな声が聞こえる。

そして、一人、また一人と「アンコール」の声が広がっていく。

「次の曲は、僕たちの新曲です。
最後の最後まで盛り上がっていってください!」

ベース、ドラム、サブギターの3人とアイコンタクトをとる。

「それでは聞いてください。
『ありがとうを、君へ』」

観客のボルテージが一気に高まる。
それに呼応するように、俺たちの演奏も激しさを増す。

あぁ、俺たちここまで来たんだ。
やっと、ここまで来れた。
なのに、お前はいないんだな。
いや、見えなくても、そこにいるんだよな。

だってさ、このバンドのヴォーカルは俺じゃない。
俺はお前のサブヴォーカルだ。
さぁ、一緒に歌おうぜ。
お前が歌いたかった歌を。
響かせたかった声を。
なぁ。
俺たち━━━━AOTM(Apostle of the music)のリーダーでヴォーカルで

俺の、この世界で一番愛していた…