その日から、私の密かな復讐が始まった。
冬香が委員会の日、私は一人でサッカー部に見学しに行った。
目の前で汗だくになり、泥だらけになり、それでも彼はキラキラした顔をしながら、ボールを追いかけていた。
私はその姿をフェンス越しに見守る。
いつもはサッカーの知識を知らない私の横で、冬香がサッカーについて説明をしてくれる。
それを聞きながら、私はサッカー部の応援をしていた、でも今日はいない。
ふと見つめる、いつも冬香がいた空間…
いつもはここで微笑んで、ハルを見守っていた。
でも、今日は……。
その時、サッカー部の練習が終わり、それぞれがボール等の片づけを始めた。
私は倉庫に向かって歩き出す。
『ハル君』
倉庫の中で片づけをしているハルの後ろ姿に声をかける。
私の声に振り向いて、そしてハルは驚いた顔を見せる。
『あれ…冬香は一緒じゃないの?』
ハルはそう言って、首をキョロキョロとしている。
冬香、冬香の姿を探しているんだよね…。
それが分かったからこそ。
そう思ってしまえる行動をされたからこそ。
本当にムカつく。
その瞬間、冬香への罪悪感なんて消えてしまった。
私はそっと彼に近づいて、そして彼にキスをした。
『………は?』
唇が離れた瞬間に、彼はそう言った。
『こんなこと、冬香にバレたら困るね?
ハル君、冬香には黙っててあげる。
…だから、私とも付き合ってよ?』
私の言葉に、目の前のハルはすっごい驚いた顔をしていた。
きっと、告白をしてきた時は、私がこんなことをする人間だなんて知らなかったよね。
私だって、こんなに醜いこと、最低なこと、そんなことをする人間だなんて知らなかったもん。
『…いいけど?
ただし、絶対にバレないようにしろよ』
でも、ハルはそう言った。
そう、言ったんだー…。
それが、私たちの始まり。

