そっと、冬香のハンカチを開く。



そこにはネックレスが入っていた。


飾りはほんの小さなハートのダイヤモンド。







『………それが、部屋に落ちてたの。
 しかもハルのベッドのすぐ下に…』



冬香の言葉に、胸がどくんって鈍く、なった気がする。






『……それってさ………。
 そういうこと、だよね?』



冬香はそう口にするも、顔は項垂れている。





もう高校生だもん。

一人っ子の男の子の部屋にこんなものが落ちてたら、そう思ってもおかしくないよね…。







『え………でも。
 もしかしたら親戚とか来てて、それでたまたま落としたとか、そういうことも考えられるじゃん!?』



私は急いで、冬香にそう言った。


どう考えても、“親戚”だなんて、言い訳にしては苦しいけど。






でも、それでも、冬香には気付かれたくなかった…。









『んー…それは、ないかな。
 なんかハルには他に好きな人がいる気がする……』




冬香の言葉に心臓が止まりそうになった。






『………………なんで?』



私が聞き返すと、冬香はフッて力なく笑った。






『そんな気がする。
 私といても別の人を求めてる気がするの…』




“女の勘”ってやつ、なのだろうか…



何か、冬香に言葉を返さないとダメだ…



そう頭では思ってるのに、いい言葉が思い浮かばない。







『…きっと、ううん…。
 絶対、そうだと思うんだ。
 だから、私、きっと振られちゃうと思う……』




目の前の親友が、その大きな瞳から大粒の涙を流しているのに。


それでも、ただ茫然と、その姿を見ているしか出来ない私は、非情、なのだろうか…







うん。



そうだよ。



私は、非情だよ。


すっごく最低な女だよ。






だって、そのネックレス、


私がハルの家に落としてきたものだから…。