「それにしても、どこまでいったんだ、澄晴達は…」

ついさっき2つもの七不思議が解決された事に何となく気が楽になったような気持ちを感じながら、
校舎を移った先に澄晴達の影を探す。

「いないわね」

取り敢えず渡った階の教室をくるっと回って見たけれど、
全く探し人の姿が見えない。

木下君が持っているので事足りたせいで余り役に立っていなかったものの、
なんだかんだ東雲君がしっかり持ってきていた懐中電灯も使いながら、
無人の教室の中も調べた。

「どうする?荒峰」
「そうね、あの状況で『トイレの怪談』を後回しにして
そこから進む先で向かえる場所を模索しながら
他の2人にも説明して引き連れて行く、
なんていう策をあの3人の誰かが考えられるというのなら探す宛もあるけれど?」
「それは…難しいな」

でしょうね。

なんて、
あの場で立ち止まって警備員のおじさんに
危うく見つかるところだった自分を棚に上げて言った言葉に、
東雲君は神妙な顔で頷いた。

思い出してからその後の臭気を連想しそうになって
慌てて思考を現在に固定しつつ、
ため息をついてうでを組んだ。

「…取り敢えず、図書室に行きましょう」
「なぜだ」
「この調子で各階を探して回るのではいつまでかかるか分からないし、
どうせ合流してからも懲りずに続けるでしょう。
だったら、先に終わらせるだけ終わらせられた方が効率的だわ。
それで行くと、ここから1番近い場所は図書室ってだけよ」
「確かに。じゃあそうしよう…それにしても」

そう言って何やら微笑ましい物を見るような目で東雲君がこちらを見つめて来て、
なんだか居心地が悪い気分になる。

「なによ」
「いや」

くすっと息が漏れるような音で東雲君が静かに笑う。

「荒峰は随分、あいつらの事分かってきてるんだなと思ったら、少し嬉しいやら…面白くてな」
「なっ」

かあっと顔が熱くなっているのが分かる。

「だ、誰がそんなっ!」
「ああ、悪かったよ。恥ずかしいからってそんなにムキになるなって」
「はずかっ…〜っ、なってないわよ!」

思わず組んでた腕が外れて拳に力が入る。

だって、そんな言い方。
まるで私があんな人達と仲良くなっているみたいな…!

七不思議探検だなんて無意味な行動をしだすような人達と一緒にしないで欲しい!
という腹が立つ気持ちと、
その言葉に心の奥がなんだか暖かくなったような心地に戸惑ってつい動揺してしまう。


赤くなった顔を誤魔化すように勢い良く東雲君に背中を向けて言い捨てる。



「っ!!…ふん、勝手に言ってなたい…!!?」
「ふはっ」



噛んでしまったそれにとうとう我慢できなくなった東雲君が後ろで吹き出したのが聞こえて、
さらに私はわなわなと震えることになった。