「はぁ…あのね、
私達はたまたまこの学校で席が前後になって
知り合ったのが出会いでしょう?
第一号なんて、
それこそ私の両親まで
差し置くような言い方じゃないの」

私の両親が私を見ていないのは承知の上で、
世間一般に有りうる仮定を言う。

自分で言ったくせに、
少し心が重たくなった気がした。

無理やり振り切るように瞬きしてから、
澄晴を呆れた視線で見る。

でも、そこにはなんだかきょとんとした
顔をした澄晴がいた。

「何言ってるの?今一緒にピアノ弾いたじゃん」
「…だから何かしら」
「だから何って…え?まさか、気づいてない感じ?」
「気付いてないって、なんのことよ?」
「え、ええええー…」

あんなにわかりやすい演出したのに、とか、
完璧にあの時みたいに音合わせてきたじゃん、とか、
よく分からないことを言いながら
うなだれる澄晴が不思議でしょうがなくって
首を傾げた。

私は記憶力は悪くないほうだと
思っていたのだけれど、勘違いだったのかしら?

でも本当に、澄晴のような
明るい髪型やうるさい性格の人なら、
少しくらい記憶に残っていても
おかしくないと思うのに。

一応自分の記憶と澄晴を
もう一度照らし合わせてみたけれど、
やっぱりさっぱり引っかからない。

「やっぱり初対面よ。
あなたの顔も名前も記憶にないもの」

顎に手を添えて考えて見ても分からなかったから、
そのまま澄晴に伝えた。

うなだれていた澄晴が顔を上げる。
その目が涙目な気がするのは気のせいかしら?

「あ〜、もう!分かった!この鈍感!
アッキーは絶対に俺を知ってるよ!
なんか知らないけど勘違いしてるだけ!
…今ちゃんと説明しても信じてくれなさそうだから、
この七不思議探検終わったら、
ちゃんと話す!だから、無視しないでよ?」

私のことを失礼にも指さしながら
泣き叫ぶ澄晴。

鈍感とか勘違いとか、
身に覚えがない言葉ばかりで
少しムカッとするけれど、
ふざけたような台詞とは反対に
澄晴の目は泣きそうに悲しげで、
本当にふざけているようには見えなかった。

どこか必死にも見える澄晴に気が抜けて、
ゆっくりだけど頷くと、
ほっとしたように息を吐いた澄晴が
自分を落ち着かせるように深呼吸した。

「すー、はー。
よし、取り敢えずもう次行こ!次!
早く終わらせたい理由も出来たし…」
「荒峰さあああぁぁぁんんんん!!!!!!」
「きゃっ!!」

なに!?誰!!怪獣!??