言い合いを始めた二人は止まりそうにないわね。

そう思って後ろの東雲君達のところまで
近寄って行く。

それに気付いた東雲君が
私とキャラの被るメガネをクイッと上げて
私を呼んだ。

「荒峰、もう大丈夫か?
何かに怯えているようだったが…」

「ええ、問題ないわ。
私がか弱い女の子だなんて
勘違いをしないでくれる?」

「…そうか。ならよかった。
だがあちら側の方がか弱い雰囲気は無かったな。
正直言って七不思議の話を聞いた時より
肝が冷えた」

「肝が冷えた?なぜ?」

女子だったとは言え、
行き過ぎた喧嘩と思えば
大きな物を投げ合うくらい
珍しくないと思うけれど?

「ああ、荒峰は抱き上げられていたから
見えていなかったんだろうが、
荒峰を連れて出た後俺達は走った。
教室にいた彼女らと
顔を合わせたら面倒だからな。
が、荒峰がいなくなったと知るやいなや
とある一人が凄い速さで追いかけて来たんだ。
まさに鬼の形相だった。
しかも本当に速かったんだ。
俺達が誠以外ほとんど本気で走ったくらいに…
トラウマになりそうだ」

はあ…と東雲君が重い息を出す。

それは、
ご愁傷さまというか。

そのトラウマの原因であろう私は
少しだけ申し訳ない気持ちになった。

項垂れた東雲君の頭を見ていたら、
急に肩に何かが乗って
ぐいっと振り向かされた。