「〜!」
「おっけ!気をつけて!」

また一人声が増えた。何人いるんだろう?

身体が上下に揺れる。今更になって足首にジクジクと脈打つように痛みを感じるようになって、熱を帯びているのが分かった。

足を捻ったのなんて初めてだわ。走ることがまず無いし。こういう時は確か、安静にして患部を冷やさないといけないけど、まさか保健室に行けるはずもないし…まあ、怪我の事はこの際どうでも良いとして、あの会話してた片方の人、あの場に残ったみたいだけれど大丈夫かしら?

聞こえた声からして多分子供だもの、私と同じくらいの。まさか戦って勝とうなんて気じゃないわよね?もし本当にそんなことしたら危ないわ!あの男は誰であろうと容赦しない、できない?みたいだからマトモに話すことは出来ないし、下手をしたら怪我をしてしまうわよ!

今すぐ戻って助けないと、なんて自分が現在進行形で足手まといな事を忘れて戻るように私を抱えて走っている人に伝えようと顔を上げた瞬間、固まった。

「あ、あの!」
「え?」
「ぁ…れ?…澄晴?」
「うん、澄晴だよ?どうかした?」

見上げる顔はつい数分前まで見ていた顔で、心の中で八つ当たりしていた人物で…突然消えた私なんかを放ってもう帰ったと思ってたのに。帰ってなかったんだ。助けに来て…くれたんだ。

そう思ったら私の中で堰き止めていた何かがぶわっと溢れ出して、もう自分では止められなくなった。驚いて立ち止まった澄晴が顔を覗き込んでくる。

「えぇ!?なんで泣いてっ、そんなに怖かった?大丈夫だよ!オレらがとっちめてやるから!」

だから、ね?泣かないで。
そう言ってくれる言葉に余計熱い滴が溢れて止まらなくなる。

「…っ」
「ん?」

腕により力を込めて首元に近付き、肩におでこを付けてぐりぐり押し付けた。ひくついて上手く話せない喉を精一杯引き締めて、掠れた声で言った。

「あり、がとうっ…」
「…うん」

暫く泣き続けたけれど、それ以降澄晴は何も言わずに優しく背中をさすっていてくれた。