ダダダダダダッドンッ!

「うわああ!!」

ドシン!!!!

前から風が吹いた感覚にビクッと肩が跳ねるが、どこも痛くない。痛すぎると感覚が無くなるとか言うけれど、それにしても?

「アキちゃん!」
「ぇ…?」

呼ばれて反射的に顔をあげる。なぜか視界が歪んでいてよく見えないけれど、あの男ではない誰かが私を見下ろしていた。

「大丈夫!?怪我してない!!?」
「だ、だいじょ」
「立てる?逃げよう!」

え?え?何が起きているの?この人は誰?
逃げるって、あの不審者はどこに…あ、倒れてる。

視線を戻すと、手を差し伸べる手があった。この手は私を傷つける手じゃない、そう直感した。
迷わずその手を取って立ち上がろうとした瞬間、片足首にズキっと重い痛みを感じてつい膝を着きそうになる。床に届く前に手の主が受け止めて支えてくれた。

「ご、ごめんなさい」
「もしかして足怪我してるの?他は?」
「えと、足首を捻って、怪我はそれだけ」
「よし!俺の首に手回して」
「へ?ぁっ!」

一瞬で肩と膝裏に手を回されて、理解が追いつかない間に視界がくるりと回った。

わ!わ!これ、もしかして、今日二回目だわ!

混乱で変な計算をしつつ、首に回した腕にぐっと力を入れてすがりついた。
慌てて相手の首に近づくと、ほんの少しいい香りがしたのに思わず頬が熱くなる。

こんな非常事態に何考えてるの?私のばか!

暗いから分からないだろうけれど、こんなに近いと見られてしまう気がして顔を肩に押し付けて隠すと同時に、身体が揺れて走り出したのが分かった。