小憎い少女を睨みつけながら、
「……別に嫌いってわけじゃない」
小さく呟いた。
「――美織っ」
――瞬間、私の声は上ずった大人の女性の声にかき消される。
同時に、隣でがばっと顔を上げた美織が、その名前を呼んだ声の主の元へ一瞬で走りだした。
……自分から聞いといて無視かよ。てか聞こえてなかったよねあれ。絶対。
まあそれはそれで別にいいんだけど。むしろ好都合っていうか。……なんか私すごく恥ずかしいことを言ったような気がする。
よかった、聞かれてなくて。
思いつつ顔を上げれば、少し遠くに多分、噂の母親と感動の再会を果たしている美織の後ろ姿が目に入って、ようやくホッと一息がつけた。
賑やかな園内ではその会話は聞き取れないけれど、何やら叱られている模様。ざまあみやがれ。
その隣では母親を宥めている様子のその彼氏らしき男性が、美織に笑顔を向けている。優しそうな人。
なんとなくぎこちない雰囲気ではあるけれども、ちゃんと親子に見える。家族に見えるじゃないの。ふーん。
ややしてこっちを振り向いた美織に軽く笑ってやれば、彼女も今日一で子供らしい、素直な笑顔を見せてくれた。

