「なぁーんだぁ…知らないのかぁ」
聖司が残念そうに肩を落とす。
「でもさぁ気になるねぇ」
今にも音符が出そうなほど楽しそうな龍。
「俺、会ってみてぇ!!」
要までノリノリだ。
それから龍と要は『黒猫』がどんな奴なのか、話していた。
「女子かな〜?美人さんかな〜?」
しまいには誠司まで入ってはしゃいでいる。
面倒な事にならなきゃいいが…
「…あんまり詮索するのは良くないですよ」
数十分経ったぐらいだろうか。
千聖が急にそんな事を言い出した。
千聖は無表情で声からすると悲しそうにも聞こえた。
世界一のハッカーである千聖がそれを言うのは不思議な感じがする。
重くなる場の空気。
空き教室にいる全員が千聖を見て固まっている。
「……探ってもいいがな、絶対に面倒な事するなよ」
「あ、あぁ!そうだよな!」
「本当、陽向は面倒な事嫌いだね〜」
「まぁ、実際噂だからどうでもいいけど!」
さり気なく千聖をフォローするみたいに言うと三人の空気が軽くなった気がした。
ふと隣にいる千聖から視線を感じそちらを向く。
困ったような、助かったような
複雑な顔をした千聖が俺を見ていた。
「…気にするな」
三人に聞こえないくらい小さな声で千聖に向かって言った。
「すみません、お手間を取らせてしまって」
目を伏せて謝る千聖。
「…別に俺はいい」
「ありがとうございます」
律儀なところは相変わらずだ。
礼儀もちゃんとしている。
まだ少し気にしてるのか、浮かない顔をしていた。

