ガタッ
廊下を歩いていると使われていない図書室が見えた。
そこを通りすぎようとするとその図書室から物音が聞こえた。
「なんだ?」
「さぁ…
この部屋から物音が聞こえるのは珍しいですね」
「…覗いてみる?」
っておいおい。そういう要はもう覗こうとしてるんですけど。
「…なぁ、女子がいんぞ?」
は?
「まっさか〜。…あ、ほんとだ」
「えぇー…あの子なにしてるの?」
「机の上で横になってますね」
俺は有無を言わず扉に手をかける。
ガラッ
「あ、勇者」
後ろから誠司の声がしたが無視をして女子生徒に近付く。
…
……
「なんだこいつ」
「…寝てますね」
「すんげぇちっせー」
「黒髪長いね…」
「てかさぁめっちゃ美人じゃない〜?」
そう言って俺達は寝ている生徒の顔を覗き込んだ。
綺麗な顔立ちぽいが、前髪が長く目元がはっきり見えない。
夕日があたっている机がよほど気持ちいいのか、一定の寝息で幸せそうに寝ている。
こんなやつ、この学校にいたか…?
長袖の黒のパーカーに黒い短パンに黒のショートブーツ。
短パンから生える色白の細い足。
握ったら折れそうなほど細い。
「ん…っ」
長く少し癖のかかった黒髪を半分だけ机の上から落として寝返りを打つ。
「ッ?!」
その瞬間に少しだけ見えた寝顔。
一瞬、空気が固まった。
綺麗すぎる顔立ちは儚く消えそうで、触れてしまったら一瞬にして壊れてしまいそうな感じ。
ただひとつ言えることは
こんな小さい女子は見たことがない
ということ。
俺等がいつも見る女子はパンダみたいな奴ばかりで。
必要以上に近づいてきて
五月蝿くて
香水臭くて
とにかくウザくて面倒臭い女子ばかり。
ふと俺等全員の視線を感じたのか、うっすらと目を開けはじめる。
体を起こした少女は未だ眠そうで、目の焦点が合っていない。
瞬きを繰り返す少女。
「…おい」
俺が声をかけ、肩を揺すろうとした
が
ビクッ!!
瞬間、近付いた俺の手に少女の身体は跳ね上がるように反応した。
「…っこな、いで」
細く小さすぎる声が少女の口から発せられる。
自分の両腕を抱え込みガタガタと震え出す少女。
俺はそんな少女をみて、肩に伸ばしかけていた手をゆっくりと引いた。
なぜか分からない。
ただ、触れてはいけない気がした。
沈黙がしばらく続き、それに耐えられなくなった誠司がポツリと呟いた。
「猫…」
あぁ、なるほどね。だからか…
なんて独り言を言っている誠司。
「えっと、この子、怯えてる?」
「見りゃ分かんだろ」
「なんなんだ…?」
俺等は今の状況についていけず、頭をひねるが理解できない。
分からない。
こんなに小さい女子がいるのだからそりゃそうだろう。
さっきから寝起きの少女の目は俺の後ろを見ている。
少しの沈黙があり、少女は小さく呟いた。
「…ち、さと」
?
今、千聖って…
ボソッと言った少女の口からはっきりと千聖の名前を呼んだ。
ゆっくりと千聖を見る。
その顔は困ったような、でもどこか安心したような顔をしていた。
はぁ…と溜息をつく千聖。
「…夢、またこんなところで寝てたの?」
敬語
じゃない…。
普段の千聖は誰に対しても敬語で話している。
だからこそ、不思議に感じるのだ。
今の状況が。
「…ん。この人たち…だれ?」
千聖に両手を伸ばしながら少女は聞いた。
その少女を守るように抱きかかえる千聖。
「僕の仲間だよ」
顔を千聖の肩に埋めた少女の頭をなでながら、まるで小さい子供を扱うように千聖は優しい口調で言う。
「なか、ま…?」
「そう、仲間。だから大丈夫だよ」
そっか…と言って黙り込む少女。
「ヒロのところに行きたい…」
突然少女はそう言って千聖に抱き着く力を強めた。
「…」
千聖は少しの間黙り込むと、俺達に向き直った。
「すみません…
少し理事長のところに行ってきます。
陽向達は先に倉庫に戻っていて下さい。
あと、少し遅れるかもしれませんのでよろしくお願いします」
そう言って、少女を抱えたまま出て行く千聖。
「…あ。…え?どうゆうこと??」
「は?なに、千聖とあの子どんな関係?」
「あの子可愛いね〜」
「……」
千聖が出て行って取り残された俺等は、とにかく状況を理解しようとするのに精一杯。
まったく訳がわからない。
ただ、千聖とあの少女が何かしらの関係があることは事実なわけで。
それに多分、その関係に理事長が絡んでいることも事実で。
千聖が、俺等になにか隠していることしかわからなかった。
結局、俺等はなにも分からないまま、放課後いつものように集まる倉庫に向かった。

