何度も視界が歪んでは、唇を強く噛みしめる。 でも、溢れだす涙は止まらなかった。 走ったせいで苦しくなる胸に、顔に当たる風が涙を優しく拭きとる。 微かに期待を込めて後ろを見るが、人一人いなかった。 悲しくてふと前を向いたとき ドンッ 廊下の角でぶつかった反動で、体がぐらりと後ろに傾くと 「いたた………」 思いっきり床に尻餅をついた。