立ちあがった佐竹先輩は、保健室の入り口へと向かって行く。
だけど扉に手をかける寸前、くるっと振り向いた。
「陽菜乃ちゃんはまだ戻らなくて良いと思うぜ?
一応保健の先生に診てもらった方が良いだろ。
優志も戻ってきてねーしな」
「あ、はい。
ありがとうございます佐竹先輩」
「陽菜乃ちゃんが怪我すると、絶対環奈が悲しむからな。
環奈の悲しむ顔、オレ見たくねーから」
「ふふ、本当に佐竹先輩は、環奈が大好きですね」
いつか。
遅くても良い。
あたしと優志先輩も、佐竹先輩と環奈のように、仲良くなりたいな。
幸せと愛情がたっぷりの2人は、あたしの憧れだ。
「……陽菜乃ちゃん」
「はい」
「優志のこと、よろしくな。
優志は本当に、陽菜乃ちゃんのこと好きだから。
それだけは…忘れないで、ほしい」
「……はいっ」
佐竹先輩は、保健室を出て行った。
当たり前じゃないですか、佐竹先輩。
あたしも、優志先輩が大好きですよ。
「……聞いてたんだろ、全部。
だったら、わかるだろ。
陽菜乃ちゃんがお前のこと、どれだけ好きか。
環奈のような大事な彼女がいるオレなら、わかる。
陽菜乃ちゃんは、絶対にお前が好きだ。
あんな真っ直ぐな子、早々いねーぞ。
のんびりしてたらすぐに他の男に取られちまうかもしれねーからな。
陽菜乃ちゃんが本当に大事なら、守ってやれよ。
陽菜乃ちゃんを守れるのは、お前だけだろ?
それに、
お前だってわかってんだろ?
もう2度と、
ヤマグチヒナノの手は、離さないって……」
「……ありがとな、ハル」


