☆華子side☆





何故か泣きながら、ヒナノは走って行ってしまった。

その姿を、ユウシは哀しげな瞳で見つめていた。





ユウシ…。

まだユウシは、その瞳をやめないのね。

“あの時”からずっと、ユウシは瞳に哀しみを映したまま。

今にも泣きそうで。

いつも何かに耐えているような。

そんなユウシの哀しげな瞳が、わたしは嫌いだった。





「…ユウシ」

「……何?」

「ヒナノは、ユウシの彼女なの?」

「…………」

「……何で答えないの?」




わたしは1歩ユウシに近づいた。

ユウシは1歩後ずさりをした。

だから、わたしたちの距離は変わらない。

…いや、違う。

―――“あの時”からずっと、ユウシは誰も寄せ付けない。

誰かに頼ろうとしないし、誰かに近づこうともしない。




誰かに、

触れようともしない。