そこからどうやって家へ帰宅したのか、次の日覚えていなかった。
気が付いたら家の前にいて、普通に扉を開けていた。
「お帰り」とリビングから声をかけてくれたお母さんに「ただいま」と声をかけて、部屋へあがってしまった。
そこから手洗いうがいに、夜ご飯に見たいと朝から騒いでいたテレビ番組を見て、お風呂に入って眠ってしまった。
次の日はいつも通り朝の準備をして、また走って登校して。
教室に鞄を投げるように置き、急いで下で佐竹先輩を待つ環奈の元へ行った。
そして環奈のノロケ話を聞いていると、佐竹先輩が登校してきて。
2人の仲の良い光景を見ていると、あのクラシックにも似た聞き惚れてしまう声が聞こえた。
「おはよう。ヒナちゃん」
「お、おはようございます」
相変わらず眠そうに挨拶をする先輩は、不思議なほどいつも通りで。
昨日のことについて聞いても良いのか、凄く迷った。
だけど、あたしは聞くことが出来なかった。
あの先輩の、怒りにも哀しみにも似た瞳。
何故あんな瞳をしながらクレープ屋さんを見つめていたのか。
その理由を、付き合ってまだ2日目のあたしが聞いて良いのかわからなかったのだ。
「…ヒナちゃん、元気ないね。
どうかした?」
首を傾げながら聞いてくる先輩。
もし先輩が女であたしが男だったら、完全に惚れていた。