☆陽菜乃side☆







「……良い加減泣き止めって」





あたしは鬼頭昇と喫茶店を出て、見知らぬ建物の屋上へ立っていた。

もう長年誰も使っていないような、古さが目立つ建物。

そんなに高さはなく、4階建てぐらいだ。






あたしはずっと、喫茶店からここまで来るまで、ずっと泣いていた。

そんなあたしを、面倒そうな顔で鬼頭先輩が見る。





「だって…先輩が、可哀想で……ッ」

「可哀想?」




あたしは頷いて顔を上げた。





「ずっとずっと、優志先輩は1人で抱え込んできたんです。
雛乃先輩を、今もずっと、好きでいるんです。
それなのに…あたしってば、告白しちゃって……。

先輩、凄く優しい人だから。
誰よりも、他人の幸せを願うような、そんな人だから。

雛乃先輩と同じ名前を持つ、あたしの告白も、受け入れてくれた。
例えそれが、先輩を、傷つけることになっても……」