「陽菜乃ちゃん良い子だと思うぜ?」
「待てよハル」
村木先輩が、右手を開いて制止する。
さっきまで眠そうな声だったけど、今はもうしっかりした声をしていた。
「陽菜乃ちゃんの意見も聞かないで、勝手に決めるなよ。
陽菜乃ちゃんにだって、好きな人いるかもしれないだろ」
「そうなのか、陽菜乃ちゃん。
他に好きな人、いるのか?」
からかっているような笑顔で聞いてくる佐竹先輩。
あたしは急いで首を思い切り左右に振った。
「他に好きな人なんていません!
あたしが好きなのは、村木先輩です!!」
…勢い余って、口から飛び出した言葉。
村木先輩、佐竹先輩、環奈が驚いたようにあたしを見た。
そして周りにいた、村木先輩を毎朝見るために現れる女子たちの声も止んで静かになっていた。
え?
あたし、今何て言った?
あたしが好きなのは…村木先輩です!?
いくら勢い余ったからとは言え。
どさくさに紛れて、あたしは村木先輩に告白してしまった。
それに気が付き、一気に顔が赤くなるのが自分でもわかった。


