君と手を繋ぎたくて








「そうなのか!?」




佐竹先輩は天使ちゃんを選ぶと思っていたらしく、思い切り叫んでいた。

なかなか失礼な反応だとは思うけど、佐竹先輩に限らず殆どの人が同じ反応をしていただろう。

そりゃそうだろう。

天使ちゃんは、天使というあだ名がピッタリな美少女なのだから。

それに比べ、あたしは黒髪を下で結んだ地味な感じ。

天使という言葉とは、天と地ほどの差があるほど離れている。





それなのに。

先輩は天使ちゃんではなく、あたしを選んだ。

その辺に生息する、踏まれる雑草みたいなあたしを。

学園のアイドルと呼ばれる、大きく真っ白な百合のような天使ちゃんじゃなくて。

あたしを。





「じゃあ優志、陽菜乃ちゃんと付き合えば?」

「……は?」




佐竹先輩の無茶苦茶な発言に、先輩が素っ頓狂な声を出した。

あたしは何も言えず、佐竹先輩を見つめた。





「優志彼女いないんだろ?
陽菜乃ちゃんも彼氏いないみたいだし。
問題ねーじゃん」




得意げに話す佐竹先輩。

そんな佐竹先輩に小さく拍手を送る環奈。





た、確かに先輩のことは大好きだし、彼女になりたいとは思うよ?

だけど、そんなにアッサリ恋人になってはいけないと思う。

先輩だって、あたしと付き合うメリットなんてないんだから。