「お母さん、私怪盗ERICAになる。」



「…そう言ってくれると信じてたわ。」


「……あれ?


お母さん、警察に捕まったんじゃ…」


「私は元怪盗ERICAよ。

逃げるのなんて簡単よ。」


「“元”?」


「たった今から、怪盗ERICAは海鈴だからね。

はい、この袋の中にあなた用のERICA衣装が入ってあるわ。」


そう言って、お母さんが私に紙袋を渡した。


「…ねぇ、お母さん。


なんで、ERICAって、名前にしたの?

お母さんの名前はえりでしょ?」


「…ねぇ、海鈴?


エリカって花知ってる?」



「…あ、うん。


一度本で見たことある。」

「エリカは2月6日の誕生花なの。


2月6日は私の誕生日。


花言葉は…孤独。」


「孤独?」


「そう、お母さんの家ね、そこそこのお金持ちだった。

でもね、お母さんの家はとても冷えきっていた。


お父さん、お母さん、メイドさん、執事…みんな居たのに、最低限しか喋らず、お母さんの…つまり、あなたのおばあちゃんの笑顔なんて見た事もなかった。


だから、私はずっと孤独だった。」



「お母さん…。」


「だからね、海鈴には幸せでいて欲しかった。

他の子達も孤独な気持ちになって欲しくなかった。


…だから私は怪盗ERICAとして、

その家の空気を感じてたの。

怪盗としてね。」


「…そうなんだ。

お母さん。


私、立派に怪盗ERICAするからっ!


…だから、長生きしてね…」


「うん…」