大男が手を緩めるや否や、おりんは一目散に貫七に飛びついた。
 胸にへばりつき、にゃうんにゃうんと泣き喚く。
 よっぽど怖かったのだろう。

「よしよし。悪かったな、目ぇ離しちまって」

 ひとしきりおりんを撫で、貫七は呆然とまだ見惚れている娘に目を戻した。

「おりんの相手をしてくれて、ありがとうよ」

 再びにこりと、爽やかに笑う。
 途端に、ぽわ、と娘の顔が真っ赤になった。

 ついでに事の成り行きを見ていた従者三人も、同じように貫七に釘付けだ。
 恐るべし、美形の放つ爽やかさ。

「ところでお嬢さん。産婆さんをお探しなのかい?」

 貫七が、爽やかな笑顔のまま、娘に問うた。
 先程老人が娘と話していたのを聞いたのだろう。
 は、と我に返ったように、娘が貫七を見た。

「あ、いえ……。産婆を探しているわけではないんですけど……」

 爽やか美形に話しかけられ、娘は焦りながらも素直に答える。
 大方のやり取りは聞いていたが、診察が嫌だ、というだけで、噂に過ぎない術者を頼りに、わざわざ身籠った娘が旅をしてまでやってくるとは思えない。
 貫七はおりんを撫でながら、何気ない風に話を進めた。

「いや、お嬢さんみてぇなお方が、わざわざ来られるんじゃ、あながちこの辺りってのは、赤子に関することに詳しい人がいるんかな、と思ってよ」