『……あのさ。何で貫七は、そんなにおいらと一緒ってのに拘るの?』

 ちょっと言いにくそうに、おりんが言った。
 初めの頃は、特に不思議にも思わなかった。
 行者の元で修行していたときから、ずっと二人一緒だったので、猫になってからも当たり前のように一緒にいた。

 が、それなりに大人になれば、いろんなことがわかってくる。
 貫七がおりんを構うのも罪の意識があるからで、旅を続けているのも、自分が救えなかったために命が短くなってしまったおりんを救うためで。

 だが、ここまでべったり一緒にいなくてもいいはずなのだ。
 旅だって、どうせいざ求める術者が見つかった暁には、行者の元に戻らねばならない。
 おりんの身体が必要だからだ。

 だったらおりんは、行者に預かって貰うことも可能なはずだ。
 何もわざわざ旅籠に泊まりにくい動物を連れて旅をしなくても、貫七一人のほうが動きやすかろう。

 貫七との旅は楽しいので、一緒にいるのが当たり前になっていたが、いろいろな知識がついてくると、貫七の行動は不思議に思えることもあるのだ。

「そりゃ……旅を始めた頃は、俺も子供で一人旅は寂しかったし。お前の様子を見てないと、何か不安じゃねぇか。今でこそすっかり猫だが、昔はほんとにこのままで大丈夫なのか、とか心配だったし」

 歩き出しながら、貫七がぽつぽつ話す。