『で、恋い焦がれるお嬢さんは男だから、どうしようもないって思ってたところに、女に変えるって提案を受けた。そうなって初めて、だったら主の座も狙えるんじゃないかって気がでてきたのかも』

「なるほどなぁ」

 ふむ、と頷き、貫七は息をついた。
 まぁ、お嬢さんが女になろうが、政吉がお嬢さんに焦がれようが、そんなことはどうでもいいのだ。

「だったら奴らも、もっと必死になれってんだよな」

『……多分、お嬢さんのほうは、必死になると思うよ』

 ちょっと嫌そうに、おりんが言う。

『あいつはお前のために、女になろうとしてるし』

 貫七が、驚いたような顔でおりんを見た。
 が、すぐに、へら、といつものように笑う。

「俺もつくづく、罪な男だねぇ。うん、でもそれならそれで、せいぜい必死になって貰おう」

 軽く言う貫七に、少しおりんは驚いた。

『何言ってんだよ。必死で術者を探し当てたって、その後が厄介だよ? 政吉がお嬢さんを好いてたって、お嬢さんの、あの想いの強さは半端なもんじゃない。自分の性別を変えるぐらいなんだよ?』

 慌てたように言うおりんを、貫七は抱き上げた。
 胸に抱き寄せ、とん、とおりんの背を叩く。

「そんなもん、どうでもいい。非情と言われようと、使えるもんは使う。俺ぁお前のためなら、それぐらいやるぜ」

 貫七の胸に貼り付いたまま、おりんは泣きたくなった。