『違うよ。そこまでは思いつかなくても、それはほら、主なわけだし。思考の中だけでも、あんまり変なことはお嬢さんに対して失礼だから、自然と考えられないようになっちゃってて、だからお嬢さんの性別を変えるなんてことも、考えられなかっただけかもじゃん。そこまで考えなくても、普通に、ほんとに女だったら良かったのに、ぐらいは思ってたんじゃない?』
貫七が、渋い顔でおりんを見る。
上手く言えず、おりんはもどかしげに説明した。
『あんなに綺麗じゃん。うっかり本気で好きになっちまっても無理はないだろ? でも政吉は、あの様子から、一番お嬢さんに近く仕えてたんじゃないかな。だったら女装の過程も見るわけで。本気で好きになっても、毎朝男に戻ったお嬢さんを目の当たりにして現実に引き戻されつつ、でも女装したお嬢さんには、やっぱり惹かれる。ああ、ほんとにお嬢さんが女だったら……と思ってたところに、お前の提案だ。目から鱗だっらかもね』
「……そこまで思っていながら、何でそんな簡単なことに気付かないのかが不思議だぜ」
『だって、そんなこと、普通じゃ出来ないと思うじゃん』
なるほど、と納得し、貫七は腕組みした。
おりんの言うとおり、術者など信じられないのも無理はないのだ。
今だって、半信半疑である。
貫七は実際に行者のところで育ったし、何より魂を移すという術を見た。
だから信じられるのだ。
貫七が、渋い顔でおりんを見る。
上手く言えず、おりんはもどかしげに説明した。
『あんなに綺麗じゃん。うっかり本気で好きになっちまっても無理はないだろ? でも政吉は、あの様子から、一番お嬢さんに近く仕えてたんじゃないかな。だったら女装の過程も見るわけで。本気で好きになっても、毎朝男に戻ったお嬢さんを目の当たりにして現実に引き戻されつつ、でも女装したお嬢さんには、やっぱり惹かれる。ああ、ほんとにお嬢さんが女だったら……と思ってたところに、お前の提案だ。目から鱗だっらかもね』
「……そこまで思っていながら、何でそんな簡単なことに気付かないのかが不思議だぜ」
『だって、そんなこと、普通じゃ出来ないと思うじゃん』
なるほど、と納得し、貫七は腕組みした。
おりんの言うとおり、術者など信じられないのも無理はないのだ。
今だって、半信半疑である。
貫七は実際に行者のところで育ったし、何より魂を移すという術を見た。
だから信じられるのだ。


