「あ、じゃあ、あそこは? あそこなら店に入らないでいいし、座って貰っても大丈夫だよ」

「んでも、わざわざ持ってきて貰うのも悪いしな」

「いいよ。わざわざっても、すぐ外じゃんか。変わりゃしないさ」

 いそいそ、と女は貫七の腕を掴んで、店の入り口の横にある酒樽へ導いた。

「じゃ、そうすっかな」

 渋ったわりにはあっさりと、貫七は女に従う。

「う~ん、でもあんまり金もねぇし。こいつの分もあるしなぁ」

 酒樽に腰掛けながら呟くように言うと、女は軽くおりんを撫でて笑った。

「何だ、この子の分なんざ、気にしないでいいよ。残り物なら、たんとあるし」

「そうかい? 悪いねぇ」

 へら、と笑う。
 貫七が笑顔を向けるたびに、女は浮かされたように赤くなる。
 そして、いそいそと店に引っ込んだ。

 程なく持ってきたのは、飯に煮物、山菜のお浸しに川魚といった、豪華な膳。
 そして大きなどんぶりに猫まんまを入れて、おりんの前に置いた。

「……こりゃあ、豪華なもんだな。いやでも姐さん、俺、猫まんま程度の金しか払えねぇよ?」

 ちょっと驚いたように言うが、その貫七の目尻は微妙に下がっている。