そもそも貫七は、この茶屋とは何の関わりもない風来坊だ。
 この男が現れたのは、一体いつのことだったか。
 初めはお紺も、貫七の美貌に蕩けたものだ。

 そんなこんなで、いつの間にやら、ふと気が付けば貫七は、この茶屋の二階に上がり込んでいた。
 ただそれだけの関係だ。

 そのような得体の知れない男、女だけの家に居着かれるほうがヤバいのでは、と我に返ったものの、そこはお紺もそれなりの女子。
 しばらく見たところ、脛に傷持つ感じでもないし、何よりこんないい男を逃すのも惜しい。
 貫七もここが気に入っているようだ。

『ここに居着くなら、それなりに働いておくれよ』

 お紺の命により、とりあえずは用心棒ということで、以来ここに落ち着いている貫七なのであった。