伏見の城下は賑わっていた。
 特に稲荷山の麓は、参拝客用の店がひしめいている。

「祈祷や占いの類も、こういうところにゃ多いだろうな」

 ふらふらと通りを歩きながら、貫七は店を物色する。

「おりん、すずめ焼き食うか?」

『そんなグロいもん、食えるかよ』

「猫は狂喜しそうなもんだと思うがなぁ」

『猫は、ね』

 貫七の肩に爪を食い込ませながら、おりんは小声で答える。
 人混みでは大っぴらに会話は出来ないが、人と違って貫七の肩に乗っていられるのは、迷子の心配がなくていい。
 おりんは貫七との散歩が、結構好きだった。

「兄さん、飯食って行きなよ」

 不意に、貫七の袖を女が引いた。
 振り返ると、一膳飯屋のようだ。

「おっと、そうだな。腹も減ったところだ。美味そうな店だな」

 貫七が、にっこりと声をかけた女に笑顔を向ける。
 途端に女はぼぅっとなり、その場に棒立ちになった。

「けど残念。俺にゃ相棒がいるんでねぇ」

 ぽん、と貫七が肩の上のおりんを叩く。
 動物連れで飯屋に入るわけにはいかないだろう。
 女は、はた、と我に返り、さっと店先の酒樽を指差した。