「さて。問題は、これからだよなぁ」

 勢い込んで伏見まで来たものの、求める人物の情報はないに等しいのだ。
 道中でも、それらしい話は聞かなかった。
 知る人ぞ知る、といったところなのだろうか。

「町全体で噂になるぐらいの有名人でありゃ、探すのも楽かと思ったんだがなぁ」

 さすがにそこまで上手いこと事は運ばない。

「でも、そこまで有名だったら、実際お会いするまでに、時間がかかりそうです」

「確かに」

 うむむ、と政吉と貫七は考え込む。
 その間、例のお嬢さんは、おりんを膝に乗せて遊んでいた。

---こいつ自身は、どう考えてんだろう---

 お嬢さんに喉を撫でられながら、おりんは考えた。
 お嬢さんの正体は、ここにいる皆が知っているが、おりんの正体は貫七しか知らない。
 故に喋ることは出来ない。

---よく考えたら、こいつが男嫌いってのも、普通のことなんだよな。だって男なんだから。だったら女になったほうが困るんじゃないの---

 政吉が此度の旅の目的を、どうこのお嬢さんに伝えたのかはわからない。
 故に、実際に術師を見つけても、何を頼むつもりなのかはよくわかっていないのだ。