貫七は、むくりと起き上がった。
 そろそろと襖に手をかける。

『意を決して夜這いかい』

 いきなりかけられた声に、貫七は柄にもなく飛び上がった。
 見ると、布団の中から光る目が睨んでいる。

「お、驚かすなぃっ。小便ちびるじゃねぇか」

『いっそのこと、ちびっちまえ。夜這いどころじゃなくなるわな』

 のそりと布団から出、おりんが悪態をつく。
 全く、と言いつつ、貫七は再び襖に手をかけた。

『で、どうしようってんだよ。お紺を抱きに行くんか?』

 再びおりんが貫七の背に声をかける。

「……わかんね。でも、何かこのまま別れっちまうのも、後味悪いじゃねぇか」

 襖に手をかけたまま、貫七が言う。
 は、とおりんが、馬鹿にしたように息を吐いた。

『言ってるだろ。お前のそういう態度がいけないんだよ。変に情をかけるんじゃねぇよ! 何とも想ってないなら、お紺なんて放っておいたって構いやしないだろ。別に今後会うことなんざないんだしっ』