「何だ、そんなこと気にしてたのか? 俺のことよりも、お前がどうなるかのほうが興味あるぜ。何せお前は十年前の姿しか知らないわけだし。そういやお前の身体はどうなってんだろうな? 成長してるんかな」

 てことは、行者はおりんの成長を見ているわけだ。
 ずっと一緒にいるのに成長がわからないことに、貫七は改めて不思議な気持ちになる。

「楽しみだなぁ。早く人間の姿で再会したいな」

 嬉しそうに言う貫七に、おりんはちょっと視線を逸らせた。
 猫なのでわからないが、人であれば顔が赤くなっていただろう。

 貫七が真剣におりんを身体に戻そうと努力してくれていると感じるたびに、おりんは胸がむずむずする。
 昔はただ嬉しかったのだが、少し前からちょっと変わってきたのだ。

 多分、大人になっていろいろなことがわかってきたのだ。
 本当に行者の元にある身体は無事なのか。
 無事であったとしても、成長しているのか。

 そして先にも言った、戻ったら貫七の外見はどうなるのか。
 貫七の身体に影響はないのか。

 ……戻った自分に、貫七が引かないか。
 嬉しさに、不安が入り混じるようになった。

---貫七は、十年前のおいらしか知らないもん---

 貫七に抱え上げられたまま、おりんはぶらぶらと、肢体を揺らした。